【ネタバレ有】G4Y10/12 18:00公演覚え書き(抜粋ver)

アイドリッシュセブン VISIBLIVE TOUR "Good 4 You"のネタバレを含みます

 

 

 


はじめに書いておきたいことがある。
入ってない公演の話が苦手な人はできれば見ないでほしくて、
新規がわかったようなこと言ってるのが苦手な人も見ないでほしい。
傷つけたくて書いてるわけではないし傷つきたくて書くわけではない。

 

この前置きを書かないと私はこの感想を世の海に放てないと思う。
入っていない公演の話を見て唇を噛んだ経験が一時期の私を多ステ派にしていた。

そしていろんな大切なものを見てないし知ってないし体験していない人間がわかった様なそぶりで激重っぽい感情を語るのを見て、
大なり小なり「コンテンツの冒涜かも」と思ったことがないわけではないからだ。
自分にとって大切なコンテンツであれば尚更。

 

 


きっと円盤に入ると思う。入ってくれ。
できるだけ多くの同担と共有したい。切実に。

 


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この日のことを少しも忘れたくない。
すでに少し記憶が薄らいできていることが口惜しい。
心を名古屋に置いてきたとかそんなことも言えないくらい、昨日も一昨日も忙しくしていた。

人生の中でアイドルの現場に通っていた期間は大して長くはないが、その現場回数は優に50は超えていることだろうと思う。
人によっては大した数字ではないと思うのだが、自分にとっては全てを諳んじられるわけではない時点で「たくさん入ってきたなあ」という印象がある。
一口に現場と言っても形はさまざまあれど、やっぱり中心となるのはライブだ。


行って後悔したライブはない。ひとつもない。
全部素敵な気持ちで帰路に着いていたし、友人と連番したときには必ず「明日からも生きていける」と本気で言い合っていた。

間違いなく全部の現場経験が掛け替えのないものだけど、その中でも特に忘れたくない思い出がいくつかあった。
最初の公演、あの日の仙台公演、
大好きなグループがその形を変えてしまう前の最後のライブ、
2度とこない周年の場で 絶対に泣かないと思ってたメンバーの涙を会場が割れんばかりの声援で励ましたday1。
機材トラブルで音声が流れず、生歌バラードソロを聞いた時の非現実感も、大好きな曲のフルダンスを自担ゼロズレ最前で見た浮遊感も、
今ここには書けないようなことも含めていろんな思い出があって、そんな回の帰り道には「たぶん一生忘れない」と本気で心の底から思っていた。

今私は、その一つもしっかりと思い出せない。

最も古い記憶からは15年経っている。赤子だって高校生になる年月だ。毎時膨大な量の思い出を処理している脳みそなんだし、そりゃ忘れる。
その後も何十回と現場に入っては心を動かされているので、記憶の上書きや混濁も当然あるだろう。
悲しい。絶対に忘れたくないと本気で思っていたのに、人間は絶対に忘れてしまう。
「こんなことがあった回に入ったなあ」と思い出すことはできても、
その日の自分の気持ちや肌で感じた空気、前後には何があって誰と時間を共有したのか、詳細までは思い出せないのだ。

何一つ忘れたくないのに、全て忘れてしまう。
体験って難しいね。

だから覚えてること全部書く。
どんなに強い気持ちを持っていたとしても絶対に忘れてしまうことを知ってるからこそ、必死になって書こうと思う。
どうせ読んだって後から全てを思い出すことはできない。それでも、詳細に書いてあれば想像して思い出した気になることはできることもまた知っている。

2023年10月12日のアイドリッシュセブン VISIBLIVE TOUR "Good 4 You"名古屋公演18時開演回の日のことを、私は忘れたくない。

ちなみに、今更だがこの記事は上記公演、十龍之介の誕生日MC回の参加感想だ。
レポートではなく個人の思い出のメモとして書いているため、正確さなどには欠けるうえ主観中心の内容なので
「当日のことを知る」という目的にはあまり適してない。
まったく冷静なやつじゃないからそこだけはご留意いただきたい。

このエントリは公演前後の感情に絞ったショート版で、
ふせったーにアップした自分用のフルverから文章を抜粋してるのでところどころおかしかったりするかもしれない。


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もともとこの公演は天担と連番がしたいがための参戦だった。

TRIGGER担と十龍之介の誕生日に合わせで連番したかった。
「名古屋一緒に入ろうよ」と誘った時はまだ「TRIGGER担と連番する」というウキウキ感が強かったように思う。
そこからたった3ヶ月ほどしか経ってないにもかかわらず、この「一緒に入りたい」の気持ちは大きく変わった。


私は彼女よりひと足先に東京公演に入った。
私はこの形式のライブが好きだと思った。そして同時に天担とG4Yに入りたいと思った。どうしても。

「ねえやっぱTRIGGERって最高」が、感じられるライブだと思った。
16人4ユニットおしなべて最高だったけど、どこが一番とかそういうことじゃなくて、
求めていた”最高なTRIGGER”、”これこそがTRIGGERファンが望んでいたTRIGGER”が見られるライブだと思ったという話だ。
それを集約すると「ねえやっぱTRIGGERって最高」となるわけである。伝われ。

 

セトリがいい。パフォーマンスがいい、顔がいい。3人が3人でステージに立ってるだけで、こんなにも最高。
「見たかったTRIGGERだ」「見れるんだ」「3人でステージに立ってる」「会場がTRIGGERに惚れ惚れしている、よすぎる」という感情を持てる。


誰と入ってもどんな公演でも自担さえ見れれば「自担は最高」となれるし、仲のいい友人と入ったら全公演楽しいけど、
「TRIGGERに対する感情を共有する」という回を作ってみたかった。TRIGGERに対する感情が、それだけ自分の中で特有で独特なものだったからだ。

 

お互いかなり無理して仕事を調整したと思う。天担は名古屋で昼食を食べながら仕事をしていた。
我慢できずずっと話しかけてたのでたぶん全く捗らなかったと思う。ごめん、子供で。
うれしくてはしゃいでしまった。

 

TRIGGERの回ごとの変わり曲はTreasure!とIn the meantimeだ。
どちらも最高に好きなのだが、天担とはTreasureが見たかった。
個人的にはミンタイのダンスがめちゃくちゃ好きなんだけど、「え!?Treasure…!?」というTRIGGER担の驚喜と、他担も含めた会場全体がTRIGGERに沸き立ってめろめろになっているあの空間を空気を天担に味わって欲しかったからだ。一緒に味わいたかったからだ。


おそらくセトリはその日の中では交互に変わる。
先に公演から帰ってきた友人一織担からの報告で、自分たちが入る18時回はTreasureの回だろうことが期待できた。うれしい。
天担は今日が初日だ。一切ネタバレを踏まず今日まできた彼女に悟られない様、あまり天担の方を見ないようにしていた。

 

一織担と公演後のご飯の待ち合わせを約束して、2人で入場をした。
2階席の後ろの方だった。S席ではあるものの、おそらくS席の中では最も見えにくい席だったと思う。
3階席が頭上に被る形になるのだが、自分は背が高いからか少しだけメインモニターに屋根が被ってしまっていた。
それでも十分だった。狭い会場では後ろの方だとしても東京公演よりずっと近い。肉眼で見えそう。
あ、またコンタクトの度数上げるの忘れたな。

 

 

千とナギのアナウンス、とっ散らかるかと思ってたのに思ってたよりスマートで甘々だった。
千は大人っぽかったし、ナギもしっかり仕事していてすごくスムーズだった。
ナギの諸注意連絡、片言なのに聞き取りやすくてすごいな。
コンビニからチーズがなくなるよ、の件が好きだ。ファミマのエクレアを無くした思い出が蘇る。

 


いざ開演。

開演演出は何度見てもいい。
友人と連番しているときの「あ、もう開演時間だ」からのoverture、そしてアイドルが出てくる瞬間までの時間が一番テンション上がるかもしれない。あの独特の高揚感は何にも変え難い。

開演演出が終わり会場が静まり返る。個人的にはここで暗転とかしてほしかった。
技術的な問題なのだろうか、暗転ってしないよね、G4Y。


出てくるユニットの順番が回によってばらばらなので緊張する。
一発目TRIGGERだったらどうしよう。
いや、別にいいんだけど。オペラグラス持つ手もまだ疲れてないし目も霞んでないから一番見れるんだけど。
うっかり他のユニットで感動して涙目とかになってしまったら視界不良になるからそれこそ最初の方が見やすいかもしれないけど。
それでも、できれば天担と入るならTRIGGERが締めの回に入りたいなと思っていた。
私自身、TRIGGERラストのあの花火演出を見たことがなかったし。

 

この日の最初はŹOOĻだった。
天担はŹOOĻも好きなので4人のシルエットが映った瞬間「ŹOOĻじゃん!」という声が聞こえてきそうなくらいびっくりしながら双眼鏡を構えていた。
二人とも自担ロックオン野鳥の会スタイル。私もŹOOĻの時は野鳥の会してるので心置きなくバードウォッチしていた。
ŹOOĻのMCは悠かわいがられ回だった。かわいい。
ところで御堂虎於ってソファーで寝れるの?意外なんだけど。


二番手はIDOLiSH7だった。
私はG4Yの環くんのモデリングが好き。顔もダンスも可愛くてかっこいい。

超カワMCの最後にアイナナみんなでぎゅっとなってファンサする時、照れながらも控えめに笑顔で手を振る一織が可愛すぎて声が出た。
最近一織担とがっつり話す機会があったからか、一織が可愛いんだよな……


この瞬間「TRIGGER後半じゃん」と思っていた。これはTRIGGERラストもありえる。
一方で、個人的にはG4YのRe:valeのパフォーマンスが好きなのでRe:valeもいいよねと思っている節もあった。
Re:valeがトリになって最後の演出背負うのもエモくていい。
このメンバーでRe:valeが締めを担うのは納得感というか、先輩としてしっくりくる感じがある。


二人のシルエットが映ってRe:valeが出てきた。
あ、TRIGGER最後だ。
ということはつまりTreasureの最後演出見れるかもしれない。
「TRIGGER最高」に包まれたまま帰れるかもしれない。心が踊る。
天担と二人でTreasureを見て「TRIGGERってやっぱ最高」になれるかもしれない。


この日の二日前に天担とRe:vale担としていた作業通話でRe:vale担が落ちた後に
「そろそろ寝るわ」と言ってから、何の拍子かはじまってしまった私の3〜6部のメインストーリー感想と、
天担のTRIGGERとの出会いと抱えてる感情について朝の5時まで泣きながら話をしていた。深夜のテンションというやつだったと思う。
その時の気持ちが急に蘇る。寝不足で一杯一杯な頭で涙腺が馬鹿になってるのか、
この時点でもう「天担とTreasureが見れる」といううれしさで少し鼻を啜っていた。


Re:valeのセトリはRe-raiseバージョンだった。
やっぱりG4YのRe:valeがすごく好きだ。
百のモデリングが好き。とにかく顔と髪がいい。表情が一番自然な気がする。
千という人間がしっかり運動してることがわかって好き。
二人でステージを広く使いながらシンメトリーダンスしてるの本当に「実力派」って感じがして最高にかっこいい。
Re:valeのダンスモーション、「ん?」と思う瞬間がかなり少ない様に思う。ずっとかっこいい。
MCも可愛くて好きだし、掛け合いギャグも一番自分の好みに合う気がしていた。
シャバーニくんに対抗する千でずっと笑ってた。


ŹOOĻがササゲロセトリでRe:valeがRe-raiseセトリだったので、
隣の天担は「ムビナナセトリだな…クレライか…?」と思ってそうだなと思っていた。
後から聞いたら「思ってた!」とのことだったのでいい意味で裏切れて良かったなと思う。
いや、私は何も裏切ってないけど。
最近ずっと自分が初見の側の立場だったので気が付かなかったが、初見の反応見るのってこういう面白さがあるんだな。
初見にしろ何にしろ、今まで誰かの反応を見るということをあまりしたことがあまりなかったので
「なるほどこれは好きな人もいそうだね」と考えていた。

 

Re:valeが捌けていってTRIGGERの番がやってくる。
天担が何か話しかけて来てたけど「双眼鏡構えなよ」と一蹴してしまった。
自担ロックオン型現場厨、絶対に出捌けが大好きなタイプだろ。静止でせり上がってくる天くんを見ろ。

自分はあえて双眼鏡を構えずにいた。
TRIGGERの3人がステージに立ってる姿が見たくて、自担の大きさを感じたかったから。

きた。

ああ、最高。本当に最高。心がぎゅっとなる。
肋骨の奥の方が物理的にぎゅっとなっている気がする。
はらはらしている時にも似ているときめきが一瞬うわっと込み上げてくる。かっこいい。

3人が立ってるだけでこんなにかっこいい。

心拍数が上がる。天くんの歌い出して堰を切ったように3人が動き始めた。
ああ、アイドルだ。
一挙手一投足をかっこつけてくれる。最高にかっこいい。
リズムをとってるだけでかっこいい。
そのかっこいい立ち姿さえ歴戦の積み重ねで、ミラーの前で自分を見て、
自分の映像を見て研究してきた末の表現そのものなんだと思うと胸が苦しくなる。
本当に、ただステージにいるだけでこんなにかっこいい。
アイドルが立っているところが好きだ。歩いているところが好きだ。踊っているところが好きだ。
こんなにもかっこよくていてくれる。それが感じられるG4Yがめちゃくちゃに好き。

SUISAIのダンス、3人の時間差振り付けが多くて楽しかった。
ムビナナで「そこはヒキで見せてよ!」と思ってた部分がヒキで見れる。つま先まで見れる。頭のてっぺんまで見れる。
つなしさんの長い手足で緩急を感じるダンスが見れること、定点マルチアングルができること、シンメを感じるダンスが見れること、
天くんが二人のセンターにいる華やかさ、ビタッと揃った3人の立ち位置、大きな体を天くんと同じくらい屈ませてるところ、
「逆に天くんは屈みすぎない様にしてたりするのかな」が感じられるこのライブ感、G4Yは、最高。


ムビナナで何度も見たはずのデイブレさえ本当にかっこよくてとてもうれしい。ひれ伏したくなる。
二番のフリで3人が下手に移動する時、つなしさんが振り返って背面向きに移動しながら楽と笑い合う様な振りが好きすぎて「これだけでチケット代くらいの好きがあるな」と思っていた。
3人のフォーメーションがくるくると回るので意外と天くんがオペラグラスの丸い視界の中に入ってきてくれる。
基本的に視線はつなしさんから離せないが、つなしさんと感じの違うダンスが何となく視界の端で捉えられて
「ああ早く天くんと楽さんも見たい」という気持ちになっていた。
「自担以外を見るために当日円盤を買って帰ること」ができたムビナナ、やっぱりちょっとおかしかったよな。

 

 

 


デイブレが終わる、MCがはじまる。
正直な話、この後の出来事のことをしっかりと覚えていない。
公演自体の詳しい内容はおそらくTLに流れている各所のレポの方がうんと正確だろう。
きっとおそらくあれを泣かずに見ていられた人の感想の方が、ずっとずっと正確だと思う。
感じた感情だけが残っている。そして今、すでに薄れ始めている。


MC冒頭、会場共通挨拶のあと天くんが「今日はみんなにお願いがあります」と口火を切った。
MC中もずっとつなしさんを双眼鏡で見ていたので、その言葉に彼が「え?」という困惑した顔で天くんの方を振り返ったのが見えた。

その瞬間に全てがわかってしまった。

つなしさんだけ知らないことだ。つなしさんだけに秘密だったこと。
あのつなしさんがステージの上で本気の困惑を見せている。
少しもコミカルなところがない。少し眉を寄せて、怪訝とさえ言える様な微妙な顔でメンバーの方を見ていた。

うそ、という声が出た。理解した瞬間急速に涙が溢れてくる。
自分でも察しがよくて笑ってしまう。
でもたぶんあの瞬間、会場中の十担だけが泣き始めてたんじゃないかなと思っている。

「今日だけの特別なお願いだ」と楽の声がする。
つなしさんは「え?…ええ?」とずっと上擦った声を出していただ気がする。

「今日だけ」の言葉で確信してしまう。
察した会場から短い悲鳴が上がる。
うそ、ほんとに。本当にやるの?誕生日MC。まさかやるなんて正直少しも期待していなかった。
でもそんな、さっき昼公演から帰ってきた一織担はそんなこと全く顔に出ていなかった。顔に出やすそうな彼女は隠せさなさそうなのに。
入る前の天担と「あるかな?」という会話をしたとき、「ないでしょ」の理由を10以上並べていたくらいなのに。


「今日10月12日は、TRIGGERのメンバー 十龍之介の誕生日です!」


「むり」という声が出た。隣で天担が「え!?え!?」と驚いている。
会場から拍手が起こる。「おめでとー!」という声が一階席から聞こえた。

「会場にいるみんなで一緒に龍の誕生日をお祝いしてほしい」
「みんなでハッピーバースデーを歌いましょう」

天くんに背中を押されてつなしさんがセンターに立つ。
天くんの話始めからここまで、彼はずっと変わらず同じ困り顔をしていた気がする。
席が遠かったうえ、もう涙が止まらなくてよく見えていなかったが、
困惑の表情がずっと変わらず、戸惑いと驚嘆の声以外何も発さないことがあまりにリアルだった。


思わず嗚咽が口をついて出る。本当に本当に、誕生日回の特別MCだ。
つなしさんの誕生日だ。つなしさんの誕生日に彼に会えている。


二人の「せーの」に合わせて会場でハッピーバースデーの歌を歌いはじめた。
ここから本当に記憶が曖昧で、ただ本当に何年かぶりに人目も憚らず「うう〜っ」という声を出して泣いていた。
双眼鏡が構えていられなくなる。
何があっても絶対に双眼鏡を手放さない派の自分が、みんなが感動している時ほど「誰も見てない自担をこの目に焼き付けよう」と思ってフルシカトで自担を凝視しているタイプの自分が、レンズから目を離して顔を覆うしかなくなった。
双眼鏡を下ろした瞬間、会場中のペンライトが青くなっていたのが目に入る。


ああ、無理だ。


会場中がつなしさんを祝福している。
狭いセンチュリーホールの祝福が、何故だか世界中が彼を祝福している様に感じた。
思わず座席に座り込む私に気がついた天担が背中をそっと撫でてくれる。
天担が隣にいる。この空間で隣にいてくれる。

隣の見知らぬ2連悠担が「そうなるよね」とでもいう様な笑い声を漏らしていた。
その笑い方が妙に優しくてさらに泣けてしまう。
さっきまで白かった彼女たちの4本のペンライトが青い光に変わっていて、それさえ堪らなくなってしまう。

 

どうして、二次元なのにこんなに愛おしい。二次元なのにこんなに感動する。
生きてるよ。生きてないの?もう生きてるじゃん。たぶんもう生きてるんだと脳みそが錯覚している。

「実はツアー日程が出た時から天と2人でこっそり計画してたんだ」

天と楽のうれしそうな声が聞こえる。
背中をさする天担が「そうなのー!?」と、二人と同じくうれしそうに喜んでいる。
自分だって集中して見たいはずなのに、ずっと背中と肩に触れていてくれてるのが本当に優しくて、
この人と入れて自分は幸せだと思った。

天と楽が十さんの喜ぶ顔を想像しながら計画していたと思うと愛しさが溢れてくる。
彼の幸せを本気で優先する二人が大好きだ。
驚いてる彼を見てうれしそうに話す二人が大好きだ。TRIGGERのことが大好きだ。

 

この時の自分は本当に本当にアイドリッシュセブンが二次元コンテンツであることを1ミリだって覚えていなくて、
ただただ祝福される自担の姿がうれしかった。
自分が抱えるありったけのおめでとうが、一人で言っても高が知れているはずのおめでとうが、
こんな形で大きくなって本人に伝えられるなんて、なんてうれしいんだろう。
自担におめでとうと言えることが、なんでこんなに幸せなんだろう。
おめでとうって、こんなに幸せな言葉なんだ。


お礼を述べる十さんが涙ぐむ。
自分の涙もここが最高潮で、顔も見れていなければコメントも覚えていない。
本当に悔しいけど、本当に堪えることができなかった。
ライブで泣く人ってたぶんこんな気持ちなんだ。


十さんって、ステージの上で、泣けるんだ。

そんなに生身の自分を出せるんだ。そんなに心の底から喜べるんだ。
十龍之介でいられるんだ。よかったね。よかった。
あの時ステージを守ってよかったね。あの時一人で冷たいステージに立ったアイドルが、ステージの上で泣くほどの幸せを感じている。
大柄な彼の体が小さく見えるほどの大きな大きな祝福に圧倒されて、いっぱいいっぱいになって泣いている。
頑張ったね、よかったね、うれしいよ。かっこいい。
涙が少しも止まらない。おめでとう。
3部初見で泣けなかった分いまここで泣いてるんじゃないかと思うくらい、一人でステージに立った彼の姿を思い浮かべて泣いていた。

「きっとこれから龍の誕生日を迎える度、今日のことを思い出すと思う」

天くんのこの言葉、あまりに生きた人間の言葉すぎて怖い。
この瞬間、これから先の自分の毎年の10月12日の感情が決まってしまった様だった。

十さんがステージの上で祝われている。
世界が十さんに優しい。
世界が彼を愛してくれている。
彼がその足と歌声で守ったステージに立つ彼を、みんなが愛してくれている。
好きな人が幸せだと、人はこんなにうれしいんだ。

かっこいいよ。本当にステージにいてくれてありがとう。
好きでいいんだ。怖いぐらい大好きで時折切なくなるけど、でもこのまま好きでいいんだ。
アイドリッシュセブン、十龍之介のバースデー回をG4Y入れてくれてありがとう。
一人のメンバーとして彼を愛してくれてありがとう。彼のファンを想ってくれてありがとう。

 

「俺はめちゃくちゃ幸せ者です!」

「今日という日を一生忘れません!」

「お返しに、最高のライブを届けます!」

 


3人がスタンバイの位置につくとスタンドマイクが上がってくる。
まだ泣き続ける自分を介護してくれてた天担がそれを見て「え!?Treasure!?」となっていた。
「ごごごめん!」と言って手を離して双眼鏡を構える。
それでいいに決まってるだろ。気にかけてくれるのは本当にうれしいが、なにより集中して見てほしいよ。

「Treasure!」

曲が始まっても自分は双眼鏡を構えられないまま、タオルを取り出してモニターを見つめていた。
さっきまで泣いていた自担が最高にかっこいいパフォーマンスをはじめている。

自分への大きな祝福のうれしさで滲んだ目元を拭って、何百何千時間のダンスをする。
最高に練り上げられた“かっこいい”を見せてくれる。
そういうのが本当に好きだ。そういうアイドルが本当に好きなんだ。
普段はかっこつけてなさそうな生身の人間が、パフォーマンスの時に劇的にかっこよくなるのが大好きだ。
ほんとうに、本当にかっこいい。あのMCのあと踊るのがTreasureなの、ずるいでしょ。

曲が始まっても会場は青いペンライトで埋め尽くされていた。
少しまばらにはなっていたが、ほとんどが青のままだった。
2階席に入れて良かったと思った。この景色を見られて心底うれしいと思った。
祝ってくれてありがとう。お礼を言う側の立場ではないけれど、一緒に祝ってくれる全員を抱きしめたい気持ちになった。
この気持ちはなんだ。経験したことのない気持ちだ。
もとから感受性も感情も乏しい方ではないと思っていたのに、全く知らない感情に出会って困惑している。

 


この気持ちがわからない。十龍之介がただ好きだ。
幸せでいてほしいと心から思う。

どうしてだ、アイドリッシュセブン、どうしてこんなに感情が揺さぶられる。
アイドルが生きてることを突きつけてくる。彼らも人間なんだと見せつけてくる。
彼らも人間だけど、人間を推すことが怖い自分だけど、そんな自分でも彼らを推してもいいんだって教えてくれる。
幸せにできるのかもって教えてくれる。偽りのない裏側を教えてくれる。


最近、TRIGGERに対する感情を言葉にできない。
気持ちを言葉にすることが趣味なのに、今ここに抱えてる感情を言葉にすることができないでいる。
唯一無二で、感じたことがない、名前がつけられない感情だと感じている。
でもこの感情がTRIGGER担となら共有できることに気がついてしまってから、
名前はないのに確かな形として手触りを感じはじめている。

3人が3人で立ってるだけで気持ちが込み上げてくる。
かっこいい、美しい、有難い、どの言葉もしっくりくるし、どの言葉もしっくりこない。
感情の昂りの意味ではなく、崇高とか神聖とか、高潔とか畏いみたいな意味での「尊い」が一番近い気がしている。
近い気がするが、やはりこの気持ちを正確に表している気がしない。

でも同じ気持ちを抱えてる人がいると思っている。TRIGGERが好きな人ならわかるものなのかなとも思ってしまっている。
別に「TRIGGER担がTRIGGERに抱く気持ちが特別高尚」だとかそういうことでは全くなくて、
ただTRIGGERを好きになると、かなり特徴的で限定的な感情体験がそこにある、というだけの話だ。
きっとIDOLiSH7にも、Re:valeにもŹOOĻにも同じ様にそのユニット担だけにしかない感情体験がある。

TRIGGERへの感情は私にとっては未知のものだった。私は正直抱えきれている気がしない。
気持ちが大きすぎて心みたいな何かが削られてしまっている気がする。
同時に同じくらい「好きだ」という気持ちで満たしてくれる。
私より古参の人たちは私よりも何年も、あるいは何ヶ月も前からこの気持ちを抱いているんだと思うと気が遠くなりそうだ。
信じられない。削れすぎて心が残っていなかったりはしないのだろうか。

この言葉にできない独特な感情を、今まで出会ったことがないこの特別な感情を
他人と共有しているという体験が不思議でたまらない。楽しくて少し切ない。
この尊さを好きだと感じるその心が大好きになる。その感性が大好きになる。
自分のこの心が好きだから、同じ心を持ってる同ユニ担が言いようのないくらい大好きだ。
あなたもこれが好きな人間なんだね。これを受け取ったらこれを感じてこれが一番になる人なんだね。
こんな複雑な気持ち、無数の人と共有できるんだ。

私は本当に最近この気持ちを知った。知った瞬間抱えきれなくなった。
好きな気持ちに抗えない。好きな気持ちに理由が見つけられない。
TRIGGERという形を認識したときにはもう、TRIGGERというものに自然と「特別好きなもの」のタグがついていた。
人生史上一番言葉にできないこの感情を誰かと共有していることが、こんなに切実にうれしい。
名前のない感情すぎて受け止めるのに体力がいる。
これを何年も推してる人の感情、リアタイしてきた人の感情、いったいどうなってるんだろう。
シンプルに尊敬する。

こんなに心を使って推してしまうTRIGGERのこと、何年も推した先の自分がどうなってるのか想像ができない。

 

 

公演が終わる。TRIGGERの3人が挨拶をして捌けていった。
エンディング演出でキービジュアルのつなしさんが出てきてまた涙が溢れてくる。自分はこの顔に本当に弱い。
涙と疲労感で席に座り込む。
千とナギが送り出しのアナウンスをしてくれて、会場中が出口へと向かった。


自分は十さん色のタオルに顔を埋め、立ち上がれないでいた。
隣の悠担のお姉さんが「私も感動した」とつぶやく。
連番相手と話しているのか自分を見て言ってるのかわからないけど、正直なその言葉が無性にうれしくてこのお姉さんが隣でよかったなと思った。

4つ隣くらいに入ってたシンメ担のお姉さんは生きてるかな。
顔を上げて確認する余裕はないけど、この会場で今この感情を共有していると思うとなぜかお姉さんにも「おめでとう」の気持ちになった。

 

何十回と現場に入ってきた中で、初めて号泣した。
それは別に今までで一番感動したからとか、順位がついているわけではなく
きっとこれがアイドリッシュセブンというコンテンツの現場で、
十龍之介が担当だという環境が揃ったことで自分の中の条件が満ちて泣けたんだと思う。


アイドリッシュセブンは二次元のコンテンツだ、その事実は揺るがないし「生きてるじゃん」という気持ちを抱えながらも、生きてない彼らに安心感を抱いて推すことになる。
生きていないことにもどかしさを感じながらも、生きていないからこそ私たちは彼らを好きな様に推せる。
彼らが生きていては知ることができないことが知れる。

 

今までのライブで泣けなかったのは、「私には知らないことがある」という意識が少なからずあったからだったと思う。
生きてる彼らを見ている私たちは、彼らが日頃何を考え何を話し、どんな生き方をしているかリアルには知らない。
知らないことがあるという意識から、
自担が世界に祝福されていたとしてもそのうれしさに対してわたしは手触りを感じることができずにいた。んだと思う。
手触りを感じることができた今だからこう言える。

私が絶対に知ることができないこと、生きているアイドルの感情。生身の人間の姿。
彼らが現実に生きている人間である限りその全てに揺るがない“正解”があって、
その正解は彼ら以外絶対に知りようがないのだ。
どれだけ私が情報をかき集めても、距離が近くなっても、違う生きてる人間である限り憶測の域を超えない。
頭に浮かぶ憶測は全く違うものなのかもしれない。「見当違いなことを想像することは失礼なのかもしれない」という一抹の不安が、自分に“泣くほどの当事者意識”を持たせずにいた。
世界で一番幸せな傍観者でいさせてくれる、アイドルコンテンツを今も愛している。


だけど今、生きていないアイドルを推している。
今まで絶対に見ることができなかった、彼らのアイドルとしてではない生活する人間としての姿を今は見られている。
彼らの感情を推しはかることが、仮に間違っていても罪ではないと感じることができている。
解釈違い、作者の考え、舞台設定。もちろん正解不正解みたいなものがあるけど、それも含めて解釈することが許されるのがストーリーコンテンツだと思える。
描かれていない部分が描かれていないままの間は「読者に委ねられている」と感じることができる。
むしろ自分は、「生きてる他人の人生で」その推測をするのが生理的に無理だったのかもしれない。


今、思いっきり泣ける。思いっきり推せる。
新規のファン体験なんてほんのわずかで、諸先輩方に比べたら当事者の意識を持つことさえ生意気で図々しいことなんだと思う。
まあでも体験に人との比較なんて関係ないよね。
私は私が私自身に引け目を感じず、罪の意識を持たず後ろめたさを感じずに推せることが、このリミッターを外すことに必要だったんだと知った。

 


十龍之介が好きだ。
好きだという気持ちで身体が支配されることはこれまでも何度も経験してきたのに、好きだという気持ちで身体のコントロールを失ったり、「どこかで冷めた気持ち」を失ったことはなかった。
こんな気持ちにさせてくるアイドリッシュセブンが少し怖い。
こんな短期間で、こんなに大きな感情を持つことができるんだ。
この歳になって、今まで自分が出会ったことのない感情を持つことができるんだ。すでに出会った当初の冷静さはなくなってしまったように思う。
俯瞰の視点は薄れてきているように思う。
軽々しくTRIGGERの話ができなくなってしまった。こんなはずじゃなかったのに。

新規の熱量は特別なものじゃん、そこが一番アツアツで、そこから少しずつ落ち着いていくんじゃないの?自分の定位置が定まって生活に馴染んでいくんじゃないの?
なのにどうして最初よりずっと重たい感情を持ってしまってるんだ。
アイドリッシュセブンに出会って、TRIGGERに出会って、十龍之介に出会って、
簡単に人生を変えようとしている自分が怖い。

 

昼公演に入った一織担と連絡していると特別MCが夜公演のみだったという事実を知る。今日の全公演そうだとばかり思っていたので衝撃を受けた。
その日の最後公演のみって、そんなところまでリアルアイドルと一緒なんだ。

同時に、「見てない十担もいるんだ」という気持ちになる。
「入れた側」「入れなかった側」でいえば、私は「入れなかった側」の経験の方が圧倒的に多い。
感情のロックが外れた心で共感を得てしまい、ものすごくセンチメンタルになった。

ライブは素晴らしいものだけど、同じくらいつらい気持ちにもなるものだ。
だからこそ現場好きは現場に取り憑かれている。
現場厨をしていたころの自分を思い出す。
あまり意固地にならずに楽しめていたと思うが、全通している時の気持ちよさの大部分は
実は「見てない公演がない安心感」だったんじゃないかなと今は思っている。

 


十龍之介は生きていない。
それでもたしかにあの瞬間、涙が溢れ出した一瞬だけは心の底から彼が生きていていると脳みそが思い込んでいた。
全部を忘れる没入感があった。リアルアイドルで踏みとどまっていた夢中の世界があった。

これが楽しいかどうかは正直わからない。
「十龍之介に出会わなければこんな気持ちを抱えることはなかったのに」と思ったことは短い期間で1度や2度ではない。

とんでもないコンテンツだと思う。
一番触れられたくなかった罪の意識をコンテンツ化して訴求してくるのも、
人生最大の推しを提供してくるのも全く同じ一つのコンテンツであると言うことの自分の中での矛盾がすごい。

初めて出会う感情が多すぎて上手く捉えきれない。
言葉が出てこない。言葉にしておかないと忘れてしまうのに。

十数回一緒にライブに入ったあの子も、見ず知らずの隣のお姉さんも、
他ユニ現場でスタンド席から泣き崩れる姿が見えたアリーナ席のお姉さんも、
みんなこんな気持ちで泣いてたのかな。そうなのかもしれない。

 



言葉にならなかった感情については己の力不足を呪うとして、書けることは全部書いた、気がする。
記した様な膨大な感情の波を一気に感じてキャパオーバーで泣き崩れてしまったんだと思った。
ライブで泣く体験ってこんな感じなんだ。ドルオタとしての実績が解除された気分だ。

アイドリッシュセブン、これからはどんな感情に出会わせてくれるんだろう。
かなり怖くて、少し期待してしまっている。

 

 

そしてどうかお願いです。映像化してください。
一人でも多くの同担に見てほしい。一人でも多くの同担に十龍之介の幸せを見てほしい。
もっと大きな心を抱えてる同担に、きっとこの日のことが届いてほしい。
付き合いは短いけど、確かな信頼を感じ始めているアイドリッシュセブンなら収録してくれるって、信じてるよ。